はじめに
みなさんこんばんは。
今回は前回の記事の続きとして実験動物業界での働き方のイメージが湧かない学生に向けて、
私の働いている実験動物施設ではどのような業務があり、獣医師はどのような役割を担っているかを会社のコンプライアンスに触れないよう抽象的に紹介していきたいと思います。
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ちろぱるの勤めている施設について
まず私は外資系の実験動物企業に勤めており、部署としては遺伝子解析系や微生物検査系、品質保証部門、営業部門などがありますがその中でも私は動物生産系の部門に勤めています。
生産している実験動物の分類としては
遺伝子に着目すると
・近交系
・ミュータント系
・クローズドコロニー
・交雑群
・雑動物(ワイルド)
の5種類。
微生物統御の面からみると
・無菌動物
・ノトバイオート
・SPF動物
の3種類に分類され、今私はこれらの動物の作成・・・。ではなく飼育関連の業務を担当している状況です。
また弊社では微生物統御をしながら飼育を行う為、アイソレータ管理システム(安全キャビネットのような入れ物の中で動物を飼育)やバリア管理システム(宇宙服のような防護服を着用してから動物を飼育)が採用されています。
(余談)
実験動物を飼育する際アイソレーター内は勿論の事、建物全体が動物にとって快適な23℃に調整されている。
ただ23℃が快適なのは「普通に生活している場合」での話なので、せわしなく働いている人間にとっては結構暑い。
ちろぱるの具体的な業務内容
ここが一番細かく説明したい所であり、一番コンプライアンスに引っ掛かりそうな所ですね笑。
業務内容としては私はまだまだ末端社員であり下積みのような感じなので獣医らしい業務はあまり行っておらず
・動物の餌や寝床の交換
・動物の観察(病気、奇形、同居動物同士の相性、妊娠チェック)
・各設備や消耗品の消毒や導入
・出荷前の個体鑑別
・実験動物の「生産→出荷」までのプロセスのチェック
・安楽死
この辺りの業務に関わっています(これ以上語ると社内秘に触れる可能性)。
これらの業務はやっていて楽しいですしやりがいもありますが、「一、生産現場現場職員」という印象を受ける人も多いかもしれません。
(また余談)
微生物汚染を防ぐため、施設内での作業は「手袋越し」「アイソレーター越し」「バイアスーツ越し」での作業がほとんどなので慣れないうちはめちゃくちゃ動きにくいが、4日くらい働くとすぐ慣れる。
でもやっぱり暑い。
獣医の役割
ここまではあくまで「単なる生産現場職員の業務内容」にすぎません。
では、獣医師は実際の生産施設でどのような業務を行っているかというと、
正直、獣医にしかできない業務はあんまり無い
ですね。
正確には動物の生命に影響が出るような奇形や外傷が診られた場合は所謂「専任獣医師」や「管理獣医師」が人道的エンドポイントを設定し、安楽死を決定する必要があるのですが、
そのような獣医監督の元での安楽死決定を行う必要がある場面というのはそれほど頻繁にある訳ではないので、基本的には
普段は現場作業員として働き、場合に応じて獣医の視点から動物福祉の分野の強化を目指す。
というのが主な働き方になるのかな?
獣医という資格に強いこだわりを持っている学生にとっては少し物足りなく感じるかもしれませんね。
(ただ、私の場合はもっと獣医師らしい仕事も増やしたいので『日本実験動物医学会認定獣医師』を目指しています。)
学生に実験動物施設で働くことを勧めるか?
私個人としては
・とりあえず獣医の知識は無駄にならない
・人間の医学にも必要な分野なので伸びしろは多分ある
・福利厚生が完備されている
・勉強しようと思えば様々な分野の勉強が出来る
・休日にきちんと休める(重要)
・健康な動物と触れ合える(割と重要)
などの点から結構お勧めではあるのですが、いかんせん学生に対するアピールのインパクトが弱い気がします。
飼育環境や管理形態を変える事によって動物をより幸せにしたりするのも楽しいとは思うのですが、臨床分野の
検査項目を決定し、病気を見抜いて動物を完治させ、飼い主も笑顔にする。
という理想像や、研究分野の
新しい発見を通じて世界に情報を発信する。
みたいなロマンに欠けているかもしれません。
まだ私が新人なのでまだこの世界の魅力を発見しきれていないだけかもしれませんが、私が学生にお勧めをするとしたら
「将来転職を考えた時の第一候補として考えてみて!」
という形になるかもしれません。
おわり