本日のお品書き
参考この記事はこんな人が書いてます
みなさんこんにちは。ちろぱるです。
私が小動物臨床の世界から実験動物の世界(主にマウス関係)へと移ってから早くも1年が経ちました。
今の会社での業務内容としては、受託飼育業務(企業から預かった遺伝子改変動物の飼育)や人工授精の為の採精・採卵作業、
変死した動物の病理会病などが主になりますが、それらとは別に
動物福祉のワーキンググループに所属しながら実験動物のエンリッチメントについても社内で度々議論していました。
そしてある時
・現状使われているの環境エンリッチメントが有効かどうか
・実験動物用マウスの飼育環境の改善方法
についてまとめれば、今後の論文作成の礎になるのではないかと提案された為
半年ほど論文を読み漁り試行錯誤していました。
結論からいってしまうと
正直お手上げ状態になってしまったので
無駄骨だった訳ですが
せっかく集めた知識や情報を腐らせるのももったいないので今回は
・なぜ環境エンリッチメントの有効性が調べらなかったのか
・飼育環境改善がなぜ難しいのか
について書いていきたいと思います。
あくまで新人目線での話だけどね
マウスの環境エンリッチメントの現状
まず前提として実験用のマウスがどのような環境で飼育されているかについて話します。
会社や企業によって飼育環境は様々ですが、
一般的に最低限の条件として
・ケージ内で過密にならない匹数での飼育
・単飼育ではなく、原則2匹以上の群飼育
・ウッドチップやパルプを敷材として使用
・十分寮の水や餌を与える
などが挙げられ、
プラスアルファとして、動物の飼育環境を向上するための環境エンリッチメントを与える場合が多いです。
環境エンリッチメントの種類としては
・回し車
・イグルー(かまくら型のハウス)
・トンネル
・齧り木
・コットンやティッシュ
などが挙げられます。
私が調べた感じだと、イグルーが最もストレス軽減効果が高いようですが
実際の飼育現場では主に齧り木やコットンが採用されてるみたいです。
投入コストの関係かな?
エンリッチメント効果の調査について
さてここからが本題となりますが
なぜエンリッチメントの有効性を調べるのに手間取ってしまったのでしょうか?
理由は2つあります。
1.強いストレス負荷を掛けないと有意差が出ない
世の中にエンリッチメントの有効性を検証している論文はいくつもありますが
殆どの論文では、強いストレス負荷をかけた上でエンリッチメントがどの程度機能するか
について調査しています。
具体的にストレス負荷の掛けるには
・床に電気を流す
・強制的に泳がせ続ける
・遠心管の中に閉じ込める
・単独飼育する
・過密状態となる匹数で飼育する
などさまざまな方法がありますが
私の会社は「動物福祉を考える会社」ではなくあくまで「動物を飼育する会社」であるので
通常の飼育では掛かりえないストレスを与えて調査することはできませんでした。
しかしながら、ストレスを掛けずにエンリッチメントの有効性を証明するのも困難なため
この時点で「今回の調査は難航しそうだな」という予感はしていました。
2.ストレスの科学的指標がない
一般的にストレスの科学的指標というとコルチゾールが思い浮かぶと思いますが
色々な事情(※)により今回の調査ではコルチゾールを指標にすることが出来ませんでした。
(※手技的な理由以外にも色々)
また、オープンフィールドテストや高架式十字迷路試験、剖検やその他血液検査
による測定を行える環境でもなかった為
8割方諦めムードにもなっていました。
他には体重や繁殖率を調べる案も考えましたが、
有意差を出にくい指標であることや
微細な変化をとらえる為、使用個体数や
実験期間が長引いてしまう可能性があった為
こちらもボツになりました。
以上の2点が今回の調査を諦めた主な理由です。
会社の専門外の分野に手を出すのには一苦労
飼育環境改善がなぜ難しいのか
今回に関してはエンリッチメントの有効性を調査する前から終了してしまいしたが、
仮にその次の段階の
どのように飼育環境を改善するか
というテーマまで進んでいても恐らく挫折していと思います。
その理由としては
1.ゴールをすでに達成している
受託飼育を行う施設の目標として
AAALAC認証を受ける
という概念があり、大まかに説明すると
「この会社は適切な環境で動物を飼育している」
という認定を受けるために動物の環境改善が必要な訳です。
ただし、弊社では既に認定を受けているため
無理に飼育環境を変えるメリットは殆どないと考えられます。
2.投入コストの問題
単純に飼育環境を改善したいのであれば
イグルーを追加したり、飼育スペースを広げれば良いと思います。
しかし1つ目の理由と被りますが、会社としては既に十分な飼育環境を動物に提供できているのに
更にコストを掛ける理由がないため
環境改善の為に出来ることはかなり限られてくると予想できます。
3.新たな飼育環境で再調査が必要
仮に飼育環境を変えた場合
新たな環境が果たして本当に動物のストレスを軽減したのか
を調査する必要があります。
前述した通り、動物福祉を専門とした会社でない限り
そこまでの労力を払わせてくれるかは正直疑問です。
「必要以上」の動物福祉はあまり求められていない気がする
さいごに
最後まで読んで頂きありがとうございました。
当ブログでは方向性が迷子になっているので、皆さんが見たいと思っている記事のジャンルについて教えてくれると嬉しいです。
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